2013年4月26日金曜日

"C10" Dani DaOrtiz






C10 (Dani DaOrtiz, 2013)





"例えばDaOrtizが怖ろしく不格好な原理をとびきりの不思議に仕立て上げ、マニアを煙に巻いているように、この本は完全に『時代遅れ』で『死んでしまった枝』だからこそ、再読の意味はあるやもしれぬ。"

とMoeの冊子の時に書いたけれど、本書、C10 は、まさにDaOrtizがMoeのトリックから研究・発展させた成果物だ。
無論、とても難しい。

スタックというかキーカードというか、Utopia DVDでも解説があったアレだが、さらに詳細に解説している。

まず40ppのうち半分を使って種々のスタッキング方法を、残り20ppで6つのトリックを解説。Moeはロケーションに使った原理だが、ここではフルデック・メモライズデモ、ACAAN、予言、透視とかなり多彩になっている。

ただこのトリック群はあまりにもDaOrtiz的で、ずうずうし過ぎる。もちろん手品が見せるものは、あくまで嘘で、架空の出来事だ。その代わり、マジシャンは手を尽くして偽の『物証』をちりばめ、観客に実在しない現象を錯覚させる。だがDaOrtizはそれすら放棄して、何も起こっていないのに、起こったという証拠を提示することさえせずに、それでも不思議なことがあったのだと押しつけようとする。

Moeの10枚からフィッシングで絞る、とかが可愛く思えてくるぐらいの、唖然とする手法。
ちろんそれをマジックとして成立させてしまうのがDaOrtizのすごさなのだが、正直、当人以外がまともに出来るとは思われぬし、Utopiaを見る限りでは当人の演技であってさえ、場合によっては苦しい。



具体的な手法には言及できないので、ぼんやりした文章になってしまったが、Utopia見た人なら判ってくれるんじゃあないかなあ。まあ、それらの手法はあくまでもC10 をさまざまな現象に拡張するために使われているのであり、基本原理やそのためのスタッキングはそれ単体でも非常に強力な武器。DaOrtizとは異なった発展のさせ方もまだまだあろう。
またPrediction with Two Deckは何とか出来る範囲の手順だが、これがもう本当にすげえ一致現象で、解説読んだ後での動画鑑賞にもかかわらず、気持ち悪くて声が出てしまった。

Moeの手順をこんな風に開拓し、ここまで発展させるのかという、現代の天才の凄みが感じられる素晴らしい資料でもある。ただし内容は相当に人を選ぶ。UtopiaのACAANを見て、いけると思った人だけがさらなる研究のために買うべき。

しかしそれにしても難しい。生で見た時も、むごいことをしてるなあと思ったThe Memorization Routineだが、改めて解説を読んで、心が折れた。素敵な現象なので出来るようになりたかったが、僕の脳味噌でこれは処理できない。

2013年4月23日火曜日

"Cutting Remarks" David Britland




Cutting Remarks (David Britland, 1990)


Britlandのホーンテッドパック。


ホーンテッドパックを1手順のみを解説した小冊子。元々はCard Kineticsに入る予定だったらしいのですが、ゆえあって単売。

というのもCard Kineticsとは使用ギミックが完全に別系統だから。
これ、応用範囲ひろくなさそうだけど、わりと優秀なギミックと思う。セット後の自由度がめちゃくちゃ高くって、手の中でスプレットして両面を見せた後、カードを揃えてそのままホーンテッド出来る。エンドクリーンでは無いけど、それを補うに足るだけラフな扱いができる。
動きが一般的なモノとはちょっち違うのも面白そう。

ただ想像以上に素材に左右されるようで、今、家で手に入る適当なモノを3~4種試してみたけど、どれももうひとつといった感じ。これこそセットで付けてくれても良かったのになぁ。


自動系ではなく、自分の手の中でしか起こせないけど割と良いと思います。
やはりBritland先生は趣味が良い。特にハンドリングのフェアさ、楽さが非常に好ましかった。
まあ、まだ良い材料が見付からないのだけれど。

2013年4月19日金曜日

"My Personal Stack" Dani DaOrtiz






My Personal Stack (Dani DaOrtiz, nodate)




Dani DaOrtizによるスタックデックの解説書。


Daniが12歳の頃から取り組み始めたというスタックデックの研究をまとめた西語の本 Mi Baraja Personal、その初版から6年後に書き直され、内容拡充とスリムアップが行われたのが本書の底本である。冗長な部分や、TamarizのMnemonicaと重複する部分が削除されたと聞き及んでいる。


まず、これがDaOrtizスタック。


ちょっと前に組んだやつだから、一枚くらいずれてるかも知れませんがご容赦ください。
そんで以下の特性を持っている。

①New Deck Orderに戻せる。
②前後のカードが簡単にわかる。
③一枚移動された場合も即座に判る。(Moe's Move a Card)
④飛んだ位置のカードもわかる。特定枚数目へのコントロールもできる。
⑤ミラースタックやサイクリックスタックに変化可能。
 またパリンドロミック・ミラースタックという変わり種にもなる。 

まだまだ挙げればキリがないくらい。
ただしいくつかは、正確には嘘。DaOrtiz流のずうずうしい策略でもって、「実用上はほぼ真」となっている項目がある。



実はこれ、流行のメモライズドではないし、特別なスタックでさえない。既存の某有名数理スタックに、ランダムさを演出するための例外ルールを2つ加えた変則スタック。
なので上記①~⑤を読んですげー何このスタック!と思ったら、そも基本スタックの性能をちゃんと掘り下げられていなかったと言うことだ。ちなみに僕は非常に驚いたくちで、こんな使い方もあるのかーと全編通して感心しきりであった。


あるトリックのためにスタックを使う、という場面はよく目にするが、スタックを常用するための解説というのは少ない。
スタック(特に数理)は初心者向きと思われがちだけれども、ギミックと一緒で、自由度を大幅に制限するため運用が難しい。結局、目的のトリックの前にデックスイッチするのが一番負担が少ないという結論に至り、けれどスイッチが面倒なのでスタックやっぱやめるわ、となったのは僕個人の話だが、似たような経緯の人は少なくないと思う。

私見だが、スタック常用には、カード位置の修正やミスしたときのフォローなど、Jazz Magicの技能がどうしても必要になる。そこで登場するのがJazz Magicの大家DaOrtiz。これ以上の適役は居るまい。

詳細なデック特性の研究から、基本的なカード当て、コントロール、枚数当て、4 of A Kindプロダクションの他、ポーカーデモ、スペリング、一致現象などがかなりの数、解説されている。またスタック変換で邪魔になる例外配列を解消するためのトリックも収録されており、いたれりつくせり充実の内容。

ただしもちろん、非常にDaOrtiz流であり、DVDなり生で見るなりしてあのスタンスを少しなりと感得していなければきついかもしれない。解説は丁寧だが、それでも「適当な理由を付けてカードを入れ替える」とか「スペードのKのところでカットする」「ハートのJとクラブの3をまずフォース」など、しれっと要求されたりするので注意。また抜け道が用意されているとは言え、例外ルールのせいで計算はちょっとややこしい。



幾度か書いたようにAronson読んでいないので確定的な事は言えないけれど、個人的にはこれ一冊でスタックデックのほとんどが、しかも効率良く学べると思う。
あとは MnemonicaのAppendix Ⅱ,About Order and Disorder があればスタックは十二分じゃないかな。

というわけで、非常に優れたスタックデック教本でありJazz教本。文章が散文的というか、全体にやや雑駁とした読み心地ではあったが、デック片手に本書の内容を5回くらい通せば、Jazz系の能力もかなり付くと思うよ。
ここから固めてゆけば、ゆくゆくはDaOrtizみたく、Evansの10 Exact Cutをレギュラーカード即興でやれる変態になれるかもしれない。今まで読んだDaOrtiz書籍の中ではもっともDaOrtizらしさが出ており、DaOrtizファンにもお勧めである。Utopiaとの重複もない。



Jazzyなハンドリングとは無縁、という人にはあまりお勧めしないが、数理スタックからサイクリックやミラーへの変換が割と容易に出来るので、これ1つセットしておけば実質3種のスタックとして働く。CurryのPower of ThoughtやRoy ShottのClanissh(発展版のTon Onosaka 偶然の一致にしては)などがかなり手近くなるので、そういう点でも非常に強力な武器と思う。

自分にとってかなり高度な内容だったのと、けっこうだらだら分割して読んでしまったのとで、また改めて再読したい所存。

2013年4月13日土曜日

Waters先生なにやってんすか。




私淑するT.A. Waters 先生の新作DVDが出るとの報を受け、良い機会と大著Mind Myth and Magickの評を書きがてら、そういえば先生の本職はライターで、SFとかも書いておられた筈だよなあと思い出して調べてみたところ、こんな著作を見つけました。








そのスパイを愛せ

色事はシーン・パトリックの
あまり自重しない武器ではあるが
時として彼の方が
ヤられちまう事もある

(※訳は適当)





先生なにやってんすか!?

表紙が実にセンスがあってアレですが、内容もたがわず、ハニートラップ満載のスパイ物だそうです。敵のKGBハニートラップ要員に逆ハニトラを仕掛けろとかいう話。




……まあ実際は、John A Keelという人が書いたみたいで、Watersの名前も勝手に借用したようではあります。以下を参照。
http://permissiontokill.com/blog/2010/07/18/love-that-spy/

しかしただのパルプ本かと思ったら、パルプではあるけども意外と評価が高くって、読んでみたくなりました。私の英語力だと小説は到底無理なのですが、しかし表紙と筆者名だけでもネタとして所持しておくのはありか。



DVDの話に戻ると、WatersはMaven並みにスゴ味のある人だと思うていますので、動く先生にも期待です。EMCで放送されたという雰囲気たっぷりな映像は、さすがにL&Lに求めるのは無理が有りましょうが。

まじかっこいい。(http://img.skitch.com/20100716-1u7e47dss2wjqt5wg1gqkrjf1b.png)
怖いですよ。(http://littleegyptmagic.com/emc_ta1.jpg)
またひとつEMCを買わねばいかん理由ができてしまった。そしてビデオ提供者がBritlandだ。

しかし没後15年たって新作DVDかぁ。
没後DVDといえばWonder先生のレクチャーDVDが権利関係でなにやらややこしい事になっていましたが、そこは天下のL&Lですし、収録スタジオもまんまL&Lのようなので安心しててよいかな。

2013年4月12日金曜日

"Knuckle Busters Vol.6" Reed McClintock





Knuckle Busters Vol.6 (Reed McClintock, 2004)



指だけじゃなく、心も折りに来るコイン作品集 第6巻。


とはいえこの巻はそんなに難しくなかった。
テーマはVCA(Visual Coins Across)で、つまりはThree FlyというかFingertip Coins Acrossというか。


Hatfields & McCoys
ノーエキストラのVCA。野暮ったくてNGと思う。移動するコインを毎回、反対の手で取って元の手の中に握り直すというのは、手法が透けて見える気しかしない。
McClintockはこの点について、効率主義者のアメリカ人には奇妙にねじくれて見えるだろうけどヨーロピアンには気にならないよ、ただ、そのままやっちゃ駄目だからね、ちゃんと演出しなね、と仰っておられますが、うーん。


Freedom Flight
1エキストラVCA。移動してきたコインは毎回テーブルに置いてしまうので、好き嫌いあると思うが、ビジュアルさのコントラストではむしろこの方が良いかも。

ハンドリング的にはほとんどEric JonesのMirage et Troisと同じ。JonesのDVDを見たときはまったく感ずるところがなかったのですが、今回、本書で読んでみると非常に面白く、これは是非とも習得したいです。

演じるペースの違いが大きいようで、DVDでのJonesの演技やはり性急すぎだなと(*)。
そういえばMirage et TroisのクレジットにMcClintockは無かったですね。


Searched & Destroyed VAC Conquered
今度はギミックもの。ほとんど冗談のような大胆なギミックで、ユニバーサルVCAを解決する。ギミック処理方法も大胆すぎる。ちょっと僕には無理な感じ。


難易度も高くなく、比較的とっつきやすい一冊。またエキストラ0、1、ギミックと、アプローチもバラエティがあってよかったです。普段のMcClintockは変態技量ばかりが目に付くけれども、実際には技法もギミックも原理も最大限に使っていく、現象全ての人なのだなと再認識。

手持ちはこの巻で終わりですが、是非他も読みたいです。


(*) Mirage et Troisはあまりおすすめしませんが、最近見たMetal2ではずいぶんとパフォーマンス上手くなっていて、元々の変態的コイン技量とかみ合って凄まじかったです。なにより、Metal2は演じているJones自身が楽しそう。

2013年4月8日月曜日

"Knuckle Busters Vol.5" Reed McClintock




Knuckle Busters Vol.5 (Reed McClintock, 2004)



拳を粉砕する激ムズ コイン作品集。第5巻。


3作品解説。今回のテーマはイロジカル?


Men Without Hats
RamsayのThree coins in the Hatの現代版。これは出会いが悪かったというか、COINvention DVDでのDavid Neighborsによる演技が何をやってるのかさっぱりわかんなかったんだよ。悪い意味で。

これについてはDan Watkinsも、Neighborsに非はないし他のRamsay作品は愛しているが、と断りつつも、古くさい繰り返しで、レビューしようと現象を辿って書いているうちに意味がわからなくなってくる、おまけに改善の余地すら見あたらない、といった旨の事を言っている。

全く同意。本当に面倒なので現象は書きません。


Grenoble Coin Production
Vol.4のNeverland Coin Productionのバリエーション。前者が、指先で持ったコインを引っ張ると2つに分裂する現象だったのに対し、これは指先に1枚ずつ持ってたコインが2枚ずつになる現象。やっぱりむずい。


Twilight Zen
よくわからない現象。相手に銀貨を3枚持っていてもらい、もう3枚、銀貨を取り出して右手から左手へ移動現象。
観客が手を空けると銅貨が3枚になってて、演者はいつの間にか6枚の銅貨を持ってる。

まあ、されたら不思議というか、えもいわれぬ煙に巻かれた感があるとは思う。
ハンドリングは例によって豪快だが、まあ出来ないではないかな。

何かに似ているなあと思っていたのだが、思い出した。Gary KurtzのFour Fistedだ。
あちらの方がマジックとしての筋は通っているが、物量ではMcClintockといったところか。やっぱり枚数が枚数なんで、小手先の細工ではどうしようもないぜって感じは出ると思う。あとMcClintockのは、エンドクリーンとは言わないまでも、かなりオープンな状態で終われるので、不思議さは勝るかも。


今回、買ったVol.4~6の中で1番パッとしない印象で、たぶんHatの影響が大きい。1作品がVol.4のヴァリエーションなんで、実質2作品しかないというのもあろう。

ただ、最後のTwilight Zenは、始めいまいちと思っていたのだけど、書いている内にわりと好意的な評価を付けたくなってきた。意味不明だが奇妙な魅力がある。一度見てみたい現象かも。

2013年4月3日水曜日

"Knuckle Busters Vol.4" Reed McClintock







Knuckle Busters Vol.4 (Reed McClintock, 2003)



貴様の拳を粉砕してくれようか!


Reed McClintockによるコイン作品を納めた小冊子。

いやーコインの良い手順ないかなぁとか軽い気持ちで手を出して、いま、わりと後悔してる。とにかくキ○ガイじみて難しい。この巻はメインテーマ”プロダクション”で4作品を解説。

Neverland Coin Production
 両手マッスルパス必須のフィンガーチップ・プロダクション。
New World Chink-a-Chink
 手のひらの上でマトリックス。Mcclintock Twistのビデオで実演が見られるらしいが……。
No One to Four
 Curtis Kam。4枚同時に開けるロールダウンが一瞬で出来なくてはならない。
 さらに「それ両手で同時にやれば?」と言われたそうで、やったらしい。
 8枚も出して何をするのだ。
The American Dream
 まず20枚もハーフダラー持ってないです先生。


と、こんな具合。
(数で押さない時の)Mcclintockの手順は、実に素晴らしいとそれはわかっている。Trans Zeroや4 Co Proなんて、初めて見たときは度肝を抜かれたもんねえ。フラリッシュ的なハンドリングに頼らない、確固たる不可能性がある。

のだが、むずいんだよ。
2万回くらい練習すれば出来るようになる、のかなぁ……。こういうヘビィなのこそ、時間有る時にトライしておくべきであった。いまからマッスルパス位置矯正とかしんどいです。


Trans Zero :Fantasmaのダウンロード販売だったが、もう見れない。現象自体はたぶん冊子Trans-Euro Express で解説してる。誰かプロモ動画持ってたりしませんか。

4 Co Pro:Knuckle Busters Vol.1 収録らしい。Curtis KamのDVD Silveradoにて実演あり。

2013年4月1日月曜日

緑の蔵書票の一年目。分類が緑ではない話も

当ブログを開始して丁度一年なので、
総括とマジック以外の話をつらつら。


●手品本

書評55冊分あり我ながらどうかと思いました。
実際はパンフも多いのでそう大した量ではないはずですが、
そこからどれくらいレパートリーになったかと聞かれたら、
聞かなかったふりをしたくなるような費用対効果です。

まあ読み物として読んでる側面もあるので、よいのです。
ええ、よいのです。
ランキング的なモノにするとまあ以下のような感じ。

洋書:"Thinking the Impossible" Ramón Riobóo
和書:"The Amazing Sally vol.1 佐藤喜義作品集" 佐藤大輔 
冊子:"Tearing A Lady in Two" David Britland、"ブランク" タナカヒロキ

グランプリ:"Cards on the Table" Jerry Sadowitz



●ブログ的にふりかえって

もともと文章力をどうにかしたいというのが始めた動機のひとつだったわけで、
Ramón Riobóoあたりはまずまずですが、最近は長文化したり構成が定型化したりして、
それが故に筆が滞ることも多いので、本末転倒の様相を呈しはじめています。
なんで今年度はもっとざっくりとした短評指向にしたいと思います。

開設後、私の好きなマジックブログの筆者であられるきょうじゅさんからコメント頂戴したものの、
とんちんかんなツッコミをしてしまったことがしっかりログとして残ったり、
1度お会いしただけの大先輩に一瞬で身元特定されたりして、
ああ、ネットって怖いなと思いました。


マジック的に

Dani DaOrtizを生で見まして大変感銘を受けました。
あのスタンスの問題点なり、限界も同時に感じるところではありましたが、
それらさっ引いてもレベルが段違いの化物で、しかもまだ30歳ということで、
え、ほんとにそんなに若いの、
とか思ったのですがよく考えたらこれは2011年のことであり誰だ時間を吹き飛ばしたのは。

以来、外には出ておりませぬので、マジックイベント的なもので人と目を合わさず
ひたすら書を愛でている人がいてもそれは辛うじてぼくではないです。


その他

小説:
皆川博子の初期作品再選集が刊行されてしかも今後隔月で5巻を数えるとか、
短編集も文庫化に際して収録数増えるとか聞きまして、
私はいまうっかり解脱しそうなほどの法悦の極みにいます。

その皆川博子からみで西條八十の「砂金」を読みまして非常にたんびーで良かったです。
西條先生の自重しない女性遍歴「女妖」も楽しく読みました。
ファインマン先生とは別の方向で、
どう足掻いても埋まらないだろう経験値の差を感じました。

あとはディヴァインの新訳がやはり素晴らしい出来だったり、
マクロイ女史のサスペンスが面白かったりといった所でしょうか。
特に後半戦は、手品本ふくめあまり本読みに時間を割けない
読む体力が残ってない、で歯がゆいです。
読みたい本、山ほどあるんだけどなあ。


漫画:
八十八良「ウワガキ」がSFでラブコメで素敵でした。
この作者、長期連載は初と思われるのですが、
しっかり当初の予定通り(と思われる)巻数で完成していて、
アレなネタかと思ったのが実は伏線だったりなど構成も巧みでありましたが、
なによりそれら小難しいこと考えずとも、
ただただニヤニヤできるラブコメ度の高さがよかったです。
次回作にも期待。

あとは、九井諒子「竜のかわいい七つの子」の「犬谷家の一族」がミステリ好きとしては
笑い無しに読めない素敵な短編だったり、石黒正数の元アシさんだったという
つばな「第七女子会彷徨」もよかったり。二宮ひかるもちゃんと単行本が出て安心したり。



今年一番おもしろかった文章はコレ

clavisさんの時をかける少女(アニメ)評
http://clavis.info/wiki/The_Girl_Who_Leapt_Through_Time

同氏のアマガミインプレッション、アマガミssレビューもたいへん素敵でした。
文章が面白く、衒学も調査もぶち込み、んで、内容がアイオープニングであり、
もうすっかり憧れの人です。

またそれに絡んで、というわけでもないですが、
こんな映画は見ちゃいけない! の「けいおん!」評
http://d.hatena.ne.jp/otello/20120104
を読みまして、いままでぴんと来なかった「けいおん」の魅力というか、
けいおんと前述の時かけにおいて、ある種、共通な現代的キャラ造形に対して、
少しく理解が深まった気がします。


その他

4/1なので
「雑誌出します !」
「DVD撮りました !」
「Sadowitz訳したYO !」
とか考えないではなかったですが、気が付いたら、とき既に4/1で間に合うはずもなく、
特に最後のなどは自分がやられる側だったらぬか喜びも良いところであり、
場合によっては殺意すら湧くと思われたので自重しました。

来年までには何かしらユーモアも身につけておきたいところです。


どっとはらい。