(Smells Like) Queen Spirit (John Bannon, 2021)
John Bannonの最新作は、7カードアセンブリに取り組んだ小冊子。
個人的にBannonの一番好きな作品群は、イロジカルな手法を最大限利用した結果、奇妙な現象が生み出されたパターンのものたちだ。それがパケットのFractalシリーズや、冊子Six Impossible Thingsだった。そこからすると最近の、技法無しだったり、メンタルよりだったりする本はどうにも面白くなかった。
今回、プロットは既存であるが、イロジカルな手法を上手く使い、しっかり物理的な現象が起こるので、かなり好み感じに戻ってきた。いくつか問題もあるので傑作とまでは行かないが、良い本と思う。
A4枚と余分のカード3枚の、計7枚だけを使ったAアセンブリに取り組んだ本。そればかり6手順で、一瞬で集まる物がメインだが、スローモーションもあり、変則的なものもある。おまけとして一般的な枚数(16枚)のアセンブリと、Aアセンブリの前段と言えばの4 of a kind productionがそれぞれ1手順。
シンプルなプロットなので、裏側も技法1回だけだったりして、そういう面白みは薄い。しかしながらBannonの十八番であるイロジカルな手法を、一般的プロットにどう適用するかというサンプルとしては大変優れており勉強になる。またイロジカルな手法を採用した恩恵として、ハンドリングの全体像は非常にスリム。
一方問題点としては、ほぼ全編にわたってQを使い、ガールズバンドの離合集散になぞらえる演出がある。Bannonはずっと、カードを何かに喩える物語演出は子供だましで馬鹿馬鹿しいと厳しく批判してきたのにだ。もちろんBannonの中ではセーフな匙加減であり、その辺の説明もあるのだが、でもまあちょっと言い訳がましさはある。
Bannonの創作ノート的な面白さがあり、これまでのイロジカルな技法を、既存プロットでどう使うかの作例として、とても良かった。Bannon先生におかれましては、こういった本をもっと出てほしいですね。ただ本の作りはちょっとアレなので、そこは外注してほしいですね。
あとオマケ手順の1つである通常枚数のAアセンブリは、Bannon技法を使ってJohn Careyが作った手順のさらにAlbart Chouによる改案なのだが、非常に出来が良くてこれだけのために買ってもいいくらいです。
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