2019年2月27日水曜日
"Out of Sight" Mr. E. OZO
Out of Sight (Mr. E. OZO, 1993)
比較的レアなノートですが、東京堂のとある本が無断で解説しているので日本では割に知られているかもしれません。私が購入したのは2004の第2版。初版との差違はわかりませんが、「第二版の前書き」が加えられているのと、あと末尾の2トリックは(second take)とついているので、ひょっとしたら追加の内容なのかも。
著者のMr. E. OZOというのは、まあその、Jerry Sadowitzのことのようです。よって紙面も例によって例のごとくのラフな手書き。また当然ながら限定リリースで、e-bayなどで買うしかないと思います。
このノートでは、ある原理を使った12のトリックが解説されています。この原理を使うと、演者が途中から遠くへ離れたり、両手を観客に触れたりしていても(つまりカードに触れない)、観客が押さえているカードが消えたり、別のカードに変わったり、消えて観客のポケットから出てきたり、といった現象が達成できます。
原理自体はSadowitzのオリジナルではありませんが、これをクロースアップのカードに応用し、しっかりした手順を複数作ってまとめたのは本書が初ではないかと思います。一方で、原理の孕む根本的な問題は手つかずであり、観客の扱いが難しいですし、間延びしがちですし、対一人でしか成立しません。さらに素材をカードにしたことで、現象がかなり弱くなっています。しかし他の手法では達成困難な現象であり、またなによりも、やっていてとても『楽しい』原理です。
12のトリックは、消失&移動、交換、アセンブリ(?)、説明が難しいですが「打ち消し」とでも言うべきものなど。いくつかは単なる演出バリエーションだったりします。ベストはやはり、某本で無断解説されている消失トリック"Out of sight(Second take)"で、そういう意味では本書を買っても大きな利益はないかもしれません。しかし現象や出来・不出来のまちまちな手順を読んでいるうちに、この原理に対するSadowitzの熱狂・苦闘・興奮が、紙面を通して伝わってくるかのように感じられます。
ノートというのはやはりこうあって欲しいですね。
また、Sadowitzは対マジシャンの目線があまりないのか、これだけ面白い原理や現象を展開していながら、肝心のカードのハンドリングはターンノーバー・パスやダブルリフトなどかなり直接的で、そのまま演じるにはちょっと抵抗があります。サトルティ系や錯覚系のアプローチをうまく適用できれば、まだまだ面白くなるのでは……? また氏が言っているように、他素材への発展も探る価値がありそうです。そういう意味でもよいノートです。
ひとつ残念なのは、知ってしまうとどうしても大いに効果が減じる原理なので、読む前に体験したかったということでしょうか。
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