2018年12月21日金曜日
"Rainman" Vincent Hedan
Rainman (Vincent Hedan, 2018)
2008年にフランスのコンベンションでHedanに1位もたらし、また彼をFFFFに連れて行くことになった手順Rainmanを限定公開。前身となった手順や、同テーマの手順も含めて4手順を収録。
どれも記憶術のデモンストレーション手順。限定本なのでどこまで書くか迷いましたが、ご本人が演技動画をフルで公開しているので、まあその範囲であればいいでしょう。
Before the Rain
Rainmanの前準備として、元になった手順を解説。記憶術デモンストレーションの定番現象(MoeのMove a Cardなど)をシャッフルしたデックで行う。基礎となっている原理はかなり古いもので、どうやら最近Tamariz(かその周辺)が発掘・再評価した模様。ここでの使い方はかなり単純で直接的であり、手順の使い勝手はいいものの、そういう意味ではいまひとつです。とはいえ、それはたまたま最近、別のところでこの原理を読む機会があったからで、2008年ごろに見てたら騙されたかもですが。
Rainman
赤青ふたつのデックをシャッフルし、104枚のデックで行う記憶術のデモンストレーション。この2デック混ぜる趣向が素晴らしくて、面白いし、記憶術デモとしてもよりリアリティが増す。前半はBefore the rainとほぼ同じ3現象、後半はさらに発展的な3現象の、全6段からなる手順。
普通のデックでもできなくはないのですが、104枚ならではのサトルティが利いていて、手法を上手くカバーしている。またHedanは地味な手順が多いのですが、コンテスト用という事もあってかクライマックスはビジュアルさも意識しており面白いです。
After the train
Rainmanのある要素をさらに発展させた単品現象。これは面白いし、研究の余地もありそう。本書で一番好きですが、多くは書きません。
Triple Rainman
上3作とは違った原理を使う記憶術デモンストレーション。普通のデックでもできるけれどもJermayのMarksman Deckを使うと簡単。これはなんかいまひとつでした。
Hedan氏の別の本Your mind is my playgroundも読みかけて放置しているのですが、氏はどうにも地味というか、典型的なメンタル手順が多い。演者が先にカードを言い、それから観客に確認してもらう――つまり、「あなたのカードはハートの3ですね。あってますか?」「はい」で終わるようなパターン。本書の手順もほとんどがそうで、どうにもクライマックスが弱いです。とはいえリアル寄りのメンタル手順なら、このスタイルもいいのかも知れません。
その点、Rainmanはちゃんと派手目なオチがあり、After the trainは現象こそ地味だけど出オチ感のあるインパクト十分な画が提供されてよいです。またRainmanはコンテスト手順であるためか、失敗時の軌道修正であるとか、終了後の再セットアップであるとかが、かなり細かく考えられ、道具立てに組み込まれておりそれも勉強になりました。コンテスト手順を読む事なんてあまりありませんからねー。
ずばぬけた秘密が隠されている、とは思いませんでしたし、無理して手に入れるほどでもないかと思いますが、総じて面白い一冊でした。
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