You and Me and the Devli Makes Three, Volume 1 (John Wilson, 2016)
手順3つとエッセイ3つ。
30ppで6作品なのでけっこう詳細な解説なのかと思いますが、ここの出版社(Dark Art Press)が出す本は紙面に対する文字の割合が少なめで、また改ページや空白ページも結構あったりで、情報量はそこまで多くありません。さくっと読めます。
※Dark Art Pressの典型的な紙面。1行10語くらい。
収録されている3つの手順に、新奇性や技術的な工夫は特にありません。ただ演出というか、演じる際の『シリアスさ』だけが、この人の加えたものです。最近のBenjamin Earlの冊子に似ていると言えば伝わるでしょうか。またひとつはマジックではないので、手順は実質2つです。
・The Parabola
観客が自由にカードを口にする。観客自身が、見事その場所でデックをカットしてしまう。
重大な省略がありますが、おおむねこの通りの現象が起こります。この本の中では唯一手品らしい手品で、特に代数にまつわる導入は(別の所で読んだ気もしますが)とても面白かったです。
しかし「最後に代数をやったのはいつ?放物線の式を出したら解ける?」という演者の問いに、観客が「無理だわ」と答える流れ……。いやそんなものかもしれませんが、手品の前振りで「誤り訂正符号ってのがあって、これこれの理屈で~」と言ったら「シャノンね。君の説明はちょっと間違ってるけど。ああいや、続けて?」とか言われて死にたくなった事のある私としては、この演出を使うにしても、もう少し気をつけて言葉を選びたいと思います。
・Euler and Water
めちゃくちゃOil and Waterっぽい響きですが、関係なくて、五乗根を一瞬で導き出す暗算デモンストレーションです。面白いのですが、手法的にも演出的にも、手品というよりスタントです。
・The Hypnotic Coin Bend
コイン・ベンディング。未見ですが、Benjamin EarlのSkin DVDからの引用が多く、手法やサトルティはほぼそこから来ているようです。手法的にはまったく一切面白くありません。それで演出ですが、Wilsonはこれをある種のセラピーのように演じます。現象描写のパートでは、観客の目に涙がにじむ様子を描いています。
しかし私は、マジックにこういった類の説得力はいらないし、むしろ避けるべきだと(少なくとも今は)思っています。Wilsonは、マジックの持つポテンシャルを全て引き出すのなら、リアルで意味のある事をすべきだし、それを人のために使うべきだ、と言いますが、これは非常に危うい考えで、心霊手術まであと一歩の所にあります。
(それに多くの場合、このアプローチは単純に滑稽な結果に終わると思います。それこそDerren Brownでもない限り)
読み物としては面白かったのですが、いまの私には特に役には立ちませんでした。多くのアマチュアにとってもそうだと思います。しかし色々考えをまとめる切っ掛けにはなりました。バンドルで買ったので2も手元にあり、近く読みます。
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