Act Two (Barrie Richardson, 2005)
Theater of the Mindの続刊。最近さらにCurtain Callという続刊が出版されて三部作になった。
メンタルマジックの本という分類ではあるが、三本ロープのプレゼンテーションや、ほどける結び目なども収録されており、中にはかなり難度の高いカードマジックなどもあるので、メンタリスト以外が読んでも楽しめるだろう。
パーラー系で、複数の観客を必要とする物が多い。
方法的には、常にシンプルで大胆。
いくつかキーとなる手法があり、様々なプロブレムの解法として繰り返し使用されている。この巻ではDr.Daleyのスイッチ(フォローザリーダーのラストに使われるアレ)と、二人の観客を使ったFishingが使用される事が多かった。
前巻同様、Hellis Switchも出番が多い。
前巻はACAANの特集があったが、この巻ではThink A Cardにスポットが当たっている。即席のPrincess Trickなど中々面白いのだが、考える事がけっこうあって僕の頭では処理が追いつかなさそう。
また純メンタリズムは個人的な体験であるほど効果的と思っているので、複数の人にカードを覚えてもらう解法が多かったのが、今ひとつぴんと来なかった原因だろうか。
カードと言えば、Fred RobinsonのDiagonal Palm Shift(のバリエーションらしきもの)も解説されており、うれしかった。
簡単な解説なので、残念ながらRobinsonのオリジナルタッチがどこなのかはわからないし、どこが重点だったのかもわからないのだが、それでもありがたい。Magic of Fred Robinsonでは、Barrie Richardsonのエッセイ内で言及されるのみで解説がなく、ずっとモヤモヤしていたのだ。
エッセイと読み比べ、どこがRobinsonのオリジナルタッチなのか考えてみるのも楽しい。
この技法を使ったCard to Pocketの手順は、スチールもポケットへのロードも、観客の視点が集中している中でゆっくり堂々と行うもので、技量と度胸とが相当必要な上級カードマジック。
演出には常に重きを置いており、詳細に解説されている。Richardsonがマジシャンではなく、マジックも使う講演者、という立場の人であるためだろう、やや話が長く、人によっては退屈な演出という印象を受けるかも知れない。
個人的には、有名なパズル(バネとリング)を使った、複数段におよぶ「ひっかけ」と人間の思考の盲点についての手順が特に面白かった。
Barrie Richardsonの手品は、面白く、シンプル。
発表者が書いている本というのは少なく、それがゆえに目新しいのかもしれない。
一方で、絶対的な不可能性や、悪魔的に巧緻な仕掛けはない。
あえて不可能性を下げている側面もある。
そういった事を考えるきっかけとしても良書。
うむ、Curtain Callも読むのが楽しみだ。
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