2023年9月30日土曜日

“The Close-Up Magic of Daniel Cros” Daniel Cros

The Close-Up Magic of Daniel Cros (Daniel Cros, 1983)


Daniel CrosはラスベガスのDesert Innで仕事をしていたプロマジシャン。あまり知名度はないと思うのですが※、知らずに彼の技法を使っている人は非常に多く、その非対称性では随一かもしれません。というのもHarrisのBizarre Twistのなかで一般的に行われている手法(片手でツイストする技法)が、実は彼の名を冠したCors Twistなのです。

Paul Harrisとは仲が良かったようで、Twilightを演じている動画が残っていたり、この小冊子の最初のトリックもHarrisとの共作だったりします。わずか16ページの中で7手順が解説されていて、かなり削ぎ落とされていて読みにくいですが、すべて非カードのうえ、Crosのプロっぽさが感じられて面白かったです。特に最初の3手順は、その流れからも、実際によく演じていたことが伝わる良手順。


Paper Chase

 Harrisとの共作。テーブルから紙ナプキンを借り、4つに裂いて紙玉を作って行うチンカチンクで、最後にナプキンが復活する。手順への導入、現象のわかりやすさ、インパクト、準備のし易さと文句なし。


Thimble Routine

 クロースアップのシンブル手順。途中で挟まれる、シンブルをつけた指を立てて、そこにシルクをかけるが、そのままノーカバーでシンブル“だけ”がシルクを貫通する現象はとても面白かった。最後はシンブルが3つに増える。


The Three Shell Game

 3つのシンブルを使ってスリー・シェル・ゲーム。


Silver Dollar and Penny Exchange

 銀銅トランスポを異サイズのコインで行う。……のだが、いつの間にか観客の手の中でペニーがハーフダラーサイズに変化してたりする謎の手順。どう演じたのかもう少し情報が欲しいところ。


Three Coins Pass Thru Bottom Of Large Glass

 シェルを使った、グラスからのコインの貫通。今となってはスタンダードな使い方だが、1983年としてはかなり強そう。


Half Dollars Pass Under Hands On The Table

 伏せた手の中へのコインの移動。と見せかけてオープントラベラーみたいな手順。このあたりの手順はTwilightから続けて演じていた気配がある。


Silk To Egg Routine

 シルクが卵になった後、卵シェルの種明かしをして、最後に本物の卵になる定番手順。ただ(卵シルクは詳しくないけれど)最後がちょっと変則的な構成になっていると思う。ロードやディッチの忙しなさや不自然さを排除するためなのかなと想像しています。


以上。ほとんど余計なことをしていないので、今でも使えそうなプロ手順でした。実際、自分のテーブルにやってきたマジシャンがこの手品してくれたら楽しいだろうな。全手順が非カードなのもいいですね。


※:勝手に無名と思っていたけど、二川先生によるノートの訳があったり、サイコロ使ったマトリックスが売られたりしてるので、実は著名マジシャンだったのかもしれません。