2021年4月30日金曜日

"The Ten Card Miracle" Ted Karmilovich

The Ten Card Miracle (Ted Karmilovich, 2016)


Karmilovichの限定単体トリック冊子をもうひとつ買っていました。こちらはステージ用カード手順。よく混ぜたデックから観客10人に1枚ずつカードを配り、それを演者は当てていく。

もともとTossed out deckをやっていたのだが、どうしても不満点があり、それらを解決するために作り上げた手順とのこと。確かにTossed out deckの問題は綺麗に解決されているし、実用性も高いだろうが、面白いかというとちょっと微妙であった。

Karmilovichのスタイルがだんだん分かってきて、原理や骨格は古いが、細部をじつに上手くサトルティで補強して、その上で実用性を高く仕上げている。そういう意味でこれも、こまかなサトルティはたいへん上手く、また実際に演じれば非常に効果的だろうと思うのだが、Three Pellet Testに比べるとポピュラーなプロットであるぶん、コアになっている原理がどうしても魅力に欠ける。言ってしまえば、現象説明を読んで、近いところまでは作れてしまうだろう。

というわけで本書の真価は、細かなサトルティとプロとしての仕上げにある。……のだが、多人数に演じる機会がまずない僕のようなマニアには宝の持ち腐れかなあ。このプロットが好きだったり、演じる機会があるのなら入手して損は無いと思いますが。

またオマケとして、このたぐいの手順を子供相手に演じるアイディアが載っている。この辺も実にプロっぽい。

2021年4月29日木曜日

”The Three Pellet Test” Ted Karmilovich

The Three Pellet Test (Ted Karmilovich, 2017)


Ted Karmilovichの伝説の手順。

こういう1手順だけの冊子の紹介は、どこまで書いていいのやらいつも迷う。ちょっとでも踏み込んだことを書けばそのままネタバレになりかねない。趣向そのものが肝要な場合もあるし、また「趣向が肝だ」と言及すること自体がネタバレに繋がる場合もある。困ったことではあるが、とりあえずショップの売り文句の範囲なら書いても許されるだろう。それによると、現象はこうだ。

3枚の紙切れにそれぞれ単語を書く。たとえば赤、白、青。それぞれ丸めて玉にし、手の中でよく混ぜ、それからテーブルに1列に並べる。観客も同じ事をする。まず演者が、観客の紙玉のなかから1つを選び、そのあと観客も演者の紙玉から1つを選ぶ。書かれている中身が一致する。もう一度、残り2つの中から演者が先に選び、そのあと観客が選び、やはり一致する。あたりまえだが残っている紙玉も一致する。さらに、書く単語を変えてこれを繰り返すが、やはり一致する。いくらやっても一致する。

ほんとうにそんなことができるのか?

ショップの売り文句は続く。30年以上秘密にされていた伝説の手順。準備無しの完全即席。いつでもどこでもできる。マーキングもスイッチも無し。フォース無しの完全なフリーチョイス。いやいやほんとうかよ。半信半疑で注文したのですが、ほんとうでした。恐ろしいことに。

いや、さすがにいくつかは勇み足かもしれない。特に「いつでもどこでも」について言えば、冊子の中でも言及があるが、多少の制限はある。やってやれないことはないが、基本クロースアップ向きで、もっと言うなら1対1向き。また、ほとんどの手順がそうであるように、オーディエンス・マネジメントは必要だ。非協力的な観客すら殴り殺せるというわけではないです。しかし留保がつくのはそれくらいで、あとはみんなほんとうだ。もう半歩だけ踏み込んだことを言うなら、30年以上前に作られた手順ではあります。また、雑誌や合本の一作として読んだら、読み飛ばしはしないまでも、ここまで感銘を受けはしなかった可能性はある。私は盆暗なので。

しかし嘘みたいな宣伝文句なのに看板に偽り無しのすごい手順でした。できるようになりたいもんです。クロースアップ・メンタルとしては1つの究極でしょう。なんかショップの売り文句を書いただけになってしまったが、実際それ以上に言うことがあんまりなかったのです。


なお、おまけとして同じ著者の”Target Number”という手順の追加アイディアと、古典トリックAsh on Palmの著者のハンドリングが解説されてますが、これはまあ別にといったところ。