2018年9月28日金曜日
"Card College Lighter" Roberto Giobbi
Card College Lighter (Roberto Giobbi, 2008)
ロベルト・ジョビーのセルフ・ワーキング・カードマジック解説本第2弾。
第一巻は、セルフ・ワークのトリックの解説を通じて、マジックを不思議に演じる上で重要な様々なテクニックを伝授してくれるという点で、比類のない素晴らしい本でした。ただその目的は、一巻でかなりの程度まで満足されています。巻を重ねることで実例は増えましょうが、テーマとして新しいことはありません。
そういうわけで、本書は言ってしまえば追加の作品集です。いちおう新たなるテーマとして、演目(プログラム)の構成という題材があるのですが、第一巻が打ち出したものに比べるとかなり弱いでしょう。
ただしこの『新たなテーマ』が、選ばれる作品の趣を変えています。そもそも前回の縛りが非常にきつかった。前回はすべての手順が3トリックずつのルーティンに組まれており、組み合わせによって威力を発揮するよう慎重に作品が選ばれていました。
一方、本書のテーマは『プログラムの組み方』です。オープナー・中継ぎ・クローザーの三つの章に分かれており、それぞれ7トリックが解説されています。言うならば、出来合いのプログラム(演目)7つを提供した前巻に対して、今回はプログラムの素材を提供するかたち。前巻とはちょうど『行・列』が逆というか、一段階構成をばらしたというわけです。そのため各トリックは、プログラムのどの辺りに使うのが良いかという大まかなクラス分けこそあるものの、前後に来るトリックについては特に想定されていません。ために、単独でも使いやすく、自分の手順に組み込むのもより容易でしょう。また前巻がややカード当てが多かったところ、よりバラエティに富んだ、単独で面白い手順が多いように思います。個人的には、Gemini Twinsをセルフ・ワークのままうまく4Aプロダクションに仕立てた"Fully Automatic Aces"や、巧妙かつバイプレイの楽しみがある思ったカード当て”The Thought-of Card”、これぞ数理といった"The Cards Knew"が好きです。
単なるセルフワークに留まらないような手順、デックをふたつ使うものや、ガフカードを使ったもの、運が悪いと失敗するものも、ちらほらと顔をのぞかせ始めます(これはLightestでさらに加速します)。
前巻とは少しだけ趣を変えた、より扱いやすいセルフ・ワーク作品集。『プログラムの組み方』というテーマについては、本書のみでは十分に解説できたとは思えません。しかしその方針のために、前巻とはやや趣の異なった傑作セルフ・ワーク・トリックが収録されています。初読時はちょっと食傷したんですが、それは3冊連続で読んだからというのも多分にあったのでしょう。今回、時間をおいて久しぶりに読みましたが、かなり面白かったです。
日本語版が出たと聞きました。ほんとうか……?!(ほんとうだった)