A New Angle(Ryan Plunkett & Michael Feldman, 2017)
とある『角度』に新しい角度から切り込んだ、という洒落たタイトルのストリッパー・デック研究本です。
古い原理やギミックを、改めて最新の技法や原理、現象と組み合わせるのは近年のブームと言えるでしょう。この本ではストリッパー・デックにスポットを当て、その新たな使用方法を検討しています。研究と言うにはちょっと散漫ではありますが、いろいろの可能性を示したいい内容だと思います。
約160ページの小ぶりなハードカバーで、まずストリッパーの種類や作り方についての丁寧な解説から始まります。この本で推奨されるストリッパーは市場には(おそらく)無いもので、これは小さな工夫なのですが言われてみればその通りで、蒙を啓かれた思いでした。とはいえ基本的には通常のストリッパー・デックで可能です。手順は13作品、そしてアイディアが9つ(たぶん)。そのうち別色が必要になるのが1作品あり、またエンドのストリッパーが必要なものが1作品あります。
手順は多彩で、まず最初がコレクターです。他にもIncomplete Falo Controlへの適用、カラー・チェンジング・デック、HofzinserのSuit Selectionなど、ストリッパーらしからぬ手順がいろいろと。アンシャッフルやトライアンフなど、ストリッパーと親和性の高い手順についても、安直でない、現代的な手順ばかりで読み応えがあります。
個人的に面白かったのは、他のワンウェイにも使える巧妙な「ひっくり返し」のシーケンス A Satisfying Sequence、鮮やかさと検めのフェアさを両立させるカラー・チェンジング・デック Color Shift、観客と演者でデックを混ぜるほどに並びが揃っていく Shuffleupagus、普通に混ぜているだけで表裏が混ざっていく逆転したトライアンフ The Hullucinogenic Shuffleなど。それからMirror Stackのとある特性も、ここで初めて読んだ気がします。
ひとつふたつ、ちゃんと機能するのかしらという手順もありましたが、ストリッパー・デックの魅力を十分に伝え、またそれを通じて、著者が言うように、その他のないがしろにされがちなギミックにも光を投げる面白い本でした。
本書の手順は上述の二人以外に、
Syd Segal
Nathan Colwell
Frank Fogg
Edward Boswell
Brian O'Neill
Lance Pierce
Harapan Ong
の作品・アイディアが寄せられています。Tony Chanの手順の(氏の許可の元での)改案もあります。
そういやちょっと前(だいぶ前)にBill GoldmanもMy Week With A Stripperという研究本を出していましたね。そちらは読んでおらんのですが、ページ数が10倍くらい違うし作家的にも毛色はだいぶ違いそう。