2016年2月29日月曜日
"Gene Maze and The Art of Bottom Dealing" Stephen Hobbs
Gene Maze and The Art of Bottom Dealing (Stephen Hobbs, 1994)
ボトム・ディール!!
Gene Mazeによるボトム・ディール本。200ページ近くあるしっかりした本ですがなんと全部ボトム・ディールの話です。しかも色々なボトム・ディールを集めた事典とかそういう訳でもない。
基本のボトム・ディールはErdnaseタイプを発展させた形。グリップが少し特殊になるので常用するにはややハードルがあるが、よく考えられ磨かれたことがわかるハンドリング。『カバーが利いている』『つまらず連続で行える』など多くの利点をもっている。解説も非常に詳細かつ丁寧。さらに片手ボトム・ディール、センター・ディールも解説。
それからフォールスシャッフルのフィネスやコントロールもちょっと解説している。
ここまでが技法編で60pp。残りはボトム・ディールを使った手順集。
ボトム・ディール、たまにセカンド・ディール、時にはセンター・ディールを使った手順。しかもそれらを『見えない技法』として常用する。Daley's Last Trickにまでボトム・ディール使うんだから重症だ。ボトム・ディールの使い方は決して賢いわけではないが、そもそも賢く効率よく使おうという気が全く無い。
たとえば世の中にはトップカードをフォースするのにセカンド・ディールを用いる手順が存在するけれど、Mazeの場合はボトム・ディールでこれを行う。ボトム・ディールし続ける。観客と演者がふたりでカードを配っていく手順でもそうだし、なんなら演者が両手に半分ずつ持っている状態でもこれを行う。ほんとうですか。
ただ、賢くないとは言ったものの、手順の構築自体はよく考えられていて、ボトム・ディールが必要になるタイミングでは、必ずデック半分を持った状態になっている。本人はフルデックからでも全く問題ないとの事ではあるが、いちおう凡人のためにも配慮はされた創作。
巻末にはボトム・ディールの参考文献が5ppほど載っている。筆者は、「全く網羅的な物ではない」と書いてはいるけれど、それぞれにコメントが付された詳細なもので、たいへん参考になる。
そんなわけで一冊まるまるボトム・ディール。すばらしき力業の世界。いやあ、ちょっと無理でしょうとは思うのだけれど、これができたらかっこいいよなあ。ロマンだ。それから本書で解説されているセンターディールは、かなり大胆だけど他に比べると簡易で有用な方法と思う。フォールス・ディール好きなら是非手にとって欲しい一冊。