2014年9月14日日曜日

"Nukes" Doug Edwards






Nukes(Doug Edwards, 2014)



コレクターとしても名をはせているらしいマニア、Doug Edwardsの小ぶりな作品集。


収録されている作品は半分ほどがカード、残りはロープ、ベンソン・スポンジ、メンタルなど。

全体的に入り組んだ手順ものはなく、一発ネタとかQuickieが多め。解説もあっさりしているので今ひとつ真価が分かりにくいが、幸いにも販売元サイトが良い動画を作っているので、見てみるとよいやも。

複雑なことや特殊なことはあまりしていないのだけれど、それでも、うまくいくと非常に説得力の高いトリックが多い。しかも短くてシンプル。単純な技法の精度を上げ、あっさりとしつつもマニアだって引っかける、といったところか。動画でもやってる4A出しは文章だと読み飛ばしそうなのですが、凄く良いと思いました。

ギミックというか加工することを厭わないようで、ショートカードやインスタント・デックも出てくる。しかしピュアリストであっても、Zarrow ShuffleやShove Over Shuffleを目当てに買っても良いと思う。あと前述のA出し。

またコレクターとしての側面を発揮して、本書には過去の著名マジシャンの未発表手順が幾つか収録されている。Herb ZarrowのZarrow Shuffle、DunningerのDictionary Test、Roy Bensonのスポンジ(Benson Bowl)、Cardiniのファン(これは小ネタだけど)。

Roy Bensonといえばちょっと前にRoy Benson by Starlightという決定版とも言うべき大著が出たのだけれど、Nukesの手順にはRoy Benson by Starlightで言及されていない要素がどうもあるみたい。ざっと眺めただけではあるのだけれど。
Benson Bowlも当然ながら幾つか段階があって、だからどちらが最終版だったのかは分からないし、Nukesに固有の箇所はわりと結構再現が面倒で、かつEdwardsの説明が簡素すぎていまひとつぴんとこないのだけれど、それでもRoy Benson by Starlightとの相違は面白い。また単純にソースとして入手が楽でもある。

他の要素は資料不足。Zarrowの例の本は持ってないし、Dunningerも詳しくないです。なので未発表かどうかはまあEdwardsを信じるしかないのだけれど、過去の有名マジシャンの未発表手順というのはいつだってわくわくしますね。

(もちろん別にEdwardsを疑っているわけじゃない。なおRoy Benson by StarlightにはDoug Edwards所有としてRoy Benson手製のBenson Bowl用のボウルの写真が掲載されている。Nukesにも載せればよかったのに)


内容は雑駁だし、ちょっと解説が簡素でもあるのだけれど、小粋な小品集としてとても良かった。あまりごてごてしていないのがいい。こういうのをさくっと演じられる大人になりたいものですね。

A出しと、あとRing on Ropeが特に良かったです。